E-moteVRキャラクター作成の手順

 (ver 20180510)

はじめに

本マニュアルでは、E-mote3.8でサポートされる、VR用E-mote(以下 E-moteVR)のキャラクター作成手順を説明します。
尚、VR用の作業をする前提として通常のE-moteにある程度習熟している方が対象となっています。
用語等不明な点は、ツールよりアクセス可能なオフィシャルオンラインマニュアルをご参照下さい。


■1.E-moteVRとは? 

 E-moteVRでは、3D空間に配置されたE-moteキャラクターを、ViveやPSVR、スマートフォンなどのVRゴーグルを用いて立体的に視る事が出来ます。

本技術によって、元からある2D平面用のE-moteキャラクターを、あたかも3Dキャラクターの様に立体的に見せる事が可能となります。

また、VRキャラクター制作に用いるのは従来からのE-moteエディタですので、特別な3Dの知識なしに、E-moteキャラクターの作成技術だけでVRキャラクターを作成する事が出来ます。
さらに、別途提供されるUnityプロジェクトを使用する事で(※)、赤青メガネを使用した立体視確認もできるようになっています。
VRゴーグルの無い開発環境でもVR用のキャラクターを作成する事ができます。
※ UnityE-moteVRを利用する場合は、別途マニュアルをご参照下さい。


■2.E-moteVRキャラクターを作成する際の注意点

E-moteVRでは、従来のE-moteキャラクター作成作業に加えて、特に以下の点に注意してキャラクターを作成する必要があります。

2-1.ユーザーの視点変化

E-moteVRを利用する事になるユーザーは、VRゴーグルを用いて、VR空間内で上下左右と様々に視点位置を変えてキャラクターを視る事になります。

そういった、今までのE-moteでは想定されていなかった、
“見る側視点の位置によって変化するアングルや動き”などに合わせて行うのがE-moteVR向けの調整作業になります。

2-2.キャラクターの身長

さらに、キャラクターの身長設定によって、ユーザーが見るアングルも違ってきます。
例えば、設定身長150cm以下の小柄なキャラと、180cm越えのキャラをユーザーが見る、といった場合は視点は見下ろしたり見上げたりと様々な形でキャラクターを見る事になるでしょう。
※身長設定については、別途モーション作成マニュアル内の【キャラプロファイルの設定】をご参照下さい

※ キャラクターの身長は、E-moteエディタで設定する事ができます。


■3.主な調整作業

E-moteVRでの作業は、おおよそ次のような流れになります。

3-1.Unityでの確認用にE-moteキャラクターデータを出力する

 E-moteエディタからエクスポート機能を用いてキャラクターファイル(.byte形式)とテクスチャファイル(.png)で出力します。
エクスポート時の設定は下記図を参考に

・ターゲット>COMMON
・テクスチャ分離>分離する
・スケール>任意

として下さい。
特にスケール値はテクスチャの容量調整に関してかなり自由が効くようになりますので、
[テクスチャパッキングを確認する]と併せて設定して下さい。
それら出力されたファイルを指定されたUnityプロジェクト内のフォルダにコピーして下さい。
※ UnityでE-moteVRを利用する場合は、別途マニュアルを参照して下さい。

※ E-moteエディタ>ファイル>エクスポート の設定例

3-2.VR空間での立体感の確認

UnityでVRゴーグルや赤青メガネ等を用いてVR空間でのキャラクターの立体感を確認します。
未調整のままのデータは、パーツの一部がへこんで見えたり、平坦に見えたりと立体感に乏しいなどの問題箇所があります。
様々な角度からキャラクターを眺めて、それら気になる点を重点的にリストアップしていきます。

3-3.E-moteエディタで、該当箇所のメッシュ変形を調整する

E-moteエディタに戻り、3-2. の結果を踏まえてキャラクターのメッシュを再調整します。
以上 3-1. ~ 3-3. を繰り返してVR用のキャラクターを完成させます。


■4.作業を始める前に

作業を始める前に、幾つか前提で知っておいた方が良い事を質問形式でまとめておきます。

Q.既存のE-moteキャラをVR用にそのまま使う事はできるのでしょうか?

A.キャラクターがE-mote3.8より前のテンプレートで作成されている場合は、E-mote3.8テンプレートへの移植が必要となります。

E-mote3.8用テンプレートを使用する事で、今までのキャラクター作成と同じ手順でVR用のキャラクターを作成する事ができます。
また、後述するVR向けのメッシュ調整を行う事で、VR空間でのキャラクターの立体感が向上します。

Q.いきなりVR向けのE-moteキャラを作成しても構わないのでしょうか?

A.先に2D版のE-moteキャラを作成し、それをVR用に再調整するという方法をお勧めします

一つ目は、立体視のための動きは、頭部・身体の左右上下等、既存のE-moteとほとんど同じであるという事。
二つ目としてはVRで立体的に見えるようになる為の調整作業の際は、Viveや赤青メガネなどの立体視環境が必須となりますが、それらを用いた長時間の立体視は作業者の負担も大きくなります。
身体に負担をかけず、効率的なデータ作成を行う為にも、ある程度2D版として動きの作り込みを行った上で、VR用調整作業を行う事を推奨します。

Q.3Dの為に、各パーツのZ値の調整は必要なのでしょうか?

A.VR向けに各パーツのZ値を調整する必要はありません。

E-moteVRは視差のみで立体視を実現していますので、3DでのZ値の調整は不要です。
E-moteエディタで従来通り、パーツの重ね順のみの用途でZ値を用いて下さい。
※ VRで足を動かす際の表示順を変える為のZ値調整は必要になる事があります(後述)


■5.E-moteVR用メッシュ調整作業解説

 E-moteキャラの頭部や身体の左右の挙動は立体視への影響が大きく、作り込む事でより立体的なキャラクターとして見せる事ができます。
また上下の挙動は、従来からあるキャラクターの上下動きの他に、ユーザー視点の移動による見た目の変化も勘案して調整する必要があります。
以下、頭部・身体・足のそれぞれ上下左右の動きについて解説します。

5-1.頭部の上下左右の動きを調整する

VR調整の際に、下の図のように頭部が球状であると強く想定して、各パーツの上下左右の動きを調整すると、立体感がより良くなります。
この”球体の動き”は頭部のVR調整の際は常に意識するようにして下さい。また、手前にあるパーツほど上下左右の動きの際のメッシュ変形の移動量を大きくすると、より飛び出したように見せる事ができます。

 例えば、鼻や、口元、前髪の額の部分など一番手前に来ると思うパーツの
“メッシュ(頭向き・左右)”や”メッシュ(頭向き・上下)”
を大きく動かしてみると、その効果が現れます。

確認の為、Unityに出力して立体視で見てみて下さい。以前より出っ張ったり浮いたりして見える事が実感できると思います。
逆に左向きの際に右方向に動かす、など逆方向に動かす事でパーツが奥にあるように見せる事ができます

5-2.身体の左右の動きを調整する

身体の左右の動きを調節する事で、よりVR空間での立体視を成り立たせる事ができます。
E-moteエディタで調整<->Unityで確認と、往復を繰り返してより立体的に見えるように調整を行って下さい。左側:従来の身体向き・左
右側:E-moteVRでの身体向き・左

5-3.身体の上下の動きを調整する

E-moteVRでは、ユーザー視点の縦移動に併せて身体の上下を動かします。
例えば、ユーザーが上からのぞき込むような視点でキャラクターを見る時、身体の見えるアングルは下向きとなり、身体の上面が見えるようになります。
逆に下からの視線となる時は、身体は上向きとなりあおりのようなアングルで視る事になります。図左側:ユーザーの視点は上方から、というアングルを成立させる為に身体は下向きとなる。
図右側:下方視点というアングルを成立させる為に身体は上向きとなる。


■6.下半身(VR用)の動きを調整する

両足の挙動は、VR向けの特別な物となりますので、別項目として解説します。

下半身(VR用)のパーツとして
[VR足L枠]
[VR足R枠]
[VR足L]
[VR足R]
[VR足先L]
[VR足先R]
をそれぞれ準備して、これらの中にある
“メッシュ(VR左右)”、”メッシュ(VR上下)”、”レイアウト(回り込み調整)”
を適切に設定する必要があります。

6-1.”メッシュ(VR左右)”と”レイアウト(回り込み調整)”を調整する

“メッシュ(VR左右)”はVR空間でE-moteキャラが横回転する際の動きを設定しています。
ユーザーが横方向に移動する際、それに追従するようにキャラクターも向きを変えます。
その際、足元が全く動かず棒立ち状態だと、立看板が回転しているように見えてしまい、不自然に見えます。

この不自然さを払拭する為、キャラが回転する際に、右向け右左向け左の要領で足をクロスするように動作させます。これにより擬似的に方向転換する動きを表現する事ができます。①ユーザーが右方向に移動を始める
②足をクロスさせて身体の向きを変える仕草をする
③ユーザーが停止して足も通常状態に戻る

また、左右で手前にくる足の重ね順が違う場合に対応する為、”レイアウト(回り込み調整)”も併せて調整する必要があります。 

※ 両足のVR左右による重ね順(Z座標)の設定をここで行います

6-2.”メッシュ(VR上下)”を調整する

E-moteVRでは、ユーザー視点の上下移動に合わせて両足の変形を行います。
これを制御するのが”メッシュ(VR上下)”で、
[VR足L枠]
[VR足R枠]
[VR足先L]
[VR足先R]
それぞれで設定します。

ユーザーの視点が胸より下に視点がある場合は、VR上下の値は”下”すなわちプラスの値を取り、両足上方は細く、下方は太くなり、また足首より先を縦に縮める形に変形させる事で、下から見上げたようなアングルを表現します。

逆に視点が胸より上に来た場合は、VR上下の値は”上”すなわちマイナスの値を取り、両足に逆ハの字型となるようにパースをつけて、さらに足首より先を縦方向に伸ばす事で、上から眺めるようなアングルを表現します。

図左側:VR上下の値はプラス。
ユーザーの上方視点からのアングルを成立させる為に
地面に近い程細くなるようにパースがつけられている。
また、足先(足の甲)が縦方向に
伸ばされている。
図右側:VR上下の値はマイナス。
下方視点というアングルを成立させる為に地面に近づく程
太くなるようにパースがつけられている。
また、足の甲が縦方向に縮められている事で
地面との傾きの変化を擬似的に表現している。


おわりに

いかがだったでしょうか?
以上で、E-moteVRキャラクター作成の手順マニュアルは終了となります。
ご不明な点・作製テクニックなどに関しましては、FAQまたは、E-moteForumをご参照・ご活用下さい。

バージョンアップとともに、マニュアルも刷新していきますので、ご期待ください!

今後とも有限会社エムツー並びにE-moteをどうぞ宜しくお願い申し上げます。