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VR結婚式を本物の式場で行うことでついに二次元へと旅立った。E-mote VRの技術的こだわり

VR結婚式

VR結婚式

『二人は「恋人」になり、そして「夫婦」へ』をコンセプトに、出会いから恋人となり結婚するまでの「初恋編」と、夫婦となり一つ屋根の下で過ごす「新妻編」の合計2年間を描いた『新妻LOVELY×CATION』(2017年4月28日 発売元: hibiki works)。「初恋編」と「新妻編」の間を繋ぐ結婚という人生の転換点であり晴れ舞台となるシーンを6月30日にVR結婚式として再現しました。

VR結婚式の制作や運営を行うにあたって、E-mote VRの技術的なこだわりや、実際に結婚式を挙げているチャペルを使用する意味などを紹介したいと思います。

E-moteとは

E-moteは、キャラクターの2Dイラストからわずかなステップでゲームに使える滑らかで立体的なアニメーションを作成できるM2のエンジンです。立ち絵のキャラクターの表情、向き、手足の動作を簡単かつダイナミックに動かすことができ、3Dモデルでは難しいイラストの質感をそのまま再現することができます。

2017年2月9日より、有限会社エムツーはE-mote ver3.80のリリースを開始致しました。 この度リリースされたE-mote ver3.80では数多くの新機能・新サービスが追加されております。 ご契約中のお客様につきましては詳細をご確認の上ご活用頂ければ幸いです。

E-mote VRとは

E-moteは2Dイラストに視差(奥行き情報)をつけることが可能なため、3DのVR空間にキャラクターを配置して立体表現を行うことができます。このE-mote VRを用いることで、2Dならではの質感をそのままVR空間上で再現して、二次元の世界へ行ったかのような体験が可能になりました。

VR結婚式を作る

VR結婚式を作る

hibiki worksさんから「本物の式場で結婚式をしたい!」という依頼を受けてVR結婚式を作ることになりました。いただいた新婦と牧師のイラストをE-mote VR化し、作中に登場する結婚式場をベースとして作成した会場の3Dモデル内に配置してアプリ制作を行いました。式は牧師の進行によって執り行われ、途中には新郎が実際に永遠の愛を「誓います!」と言うシーンや、誓いのキスをするシーンが用意されました。

新婦のこだわり

新婦のこだわり

E-mote VR用のキャラクター作成には、特別な3Dツールは必要ありません。 VRの為の全ての動きは、従来と同じE-moteエディター上で調整されているのでコスト的にも大変優しくなっています。

またE-mote VRの特徴として、2Dイラストの質感を損なわずに立体表現ができる点が挙げられます。 特に今回は、元のイラストが持つ女の子の柔らかさを再現するために、身体や胸などにしっかりとした“質感”を感じられるように全身全霊を傾けました。

VR結婚式

しかし2Dイラストをそのまま用いる事ができるのがE-mote VRの最大の強みであると同時に、実際のVR空間での調整が難しいという難点があります。 その為、2次元絵独特の板っぽさを出さない為のあらゆる努力が開発現場で行われました。 キャラクターの身長をメジャーで測定してみたり、ユーザーが取りうる様々な動作を実際に行ってみたり等々・・・ 全ての状況を想定し開発・調整を繰り返す事で初めて「俺の嫁!」と叫べるクオリティーを得る事ができました。


テキストウィンドウを出さないために

テキストウィンドウを出さないために

VR結婚式ではノベルゲームのようにセリフや新郎への指示をウインドウとテキストを出して表示してしまうといかにもゲームっぽくなって興ざめしてしまうため、全て牧師と新婦のセリフのみでイベントを進行します。

初めて体験される方がキャラクターのセリフのみで次に何をすればいいかわかるよう、牧師が話すシーンでは新婦が牧師の方を向くことで促したり、新郎があさっての方向を向いている時は新婦が「どうしたの?」などとしゃべるようにして、その一部は運営スタッフが状況を見て手動で操作していました。

VR結婚式

詳細は割愛しますが、この他、新婦の表情に集中できるよう、また式に臨む新郎が見ている世界を再現できるように、背景をボカす被写界深度の調整も入れることになりました。

誓いのキス

VR結婚式を作成するにあたって、誓いのキスは絶対に外せないものでした。

これはhibiki worksさんからの強い要望を反映したものでしたが、実際の結婚式場まで借りて行うイベントですから、単にHMDの映像だけで完結してしまうようではわざわざVR結婚式を行う意味がなくなってしまいます。VR内の物に触れるといった何らかの要素が必要となり、誓いのキスの実装に取り掛かりました。

「唇の柔らかさを再現するにはどうすればいいのか?」とまず思いついたのがこんにゃくゼリーでした。とりあえず自分の口に押し当ててみたところ、柔らかさは申し分なかったものの、水分を含んでベタベタとした感覚がするためNGに。

こんにゃくゼリー

「電子レンジで加熱すればいいんじゃねえ?」とトライした結果がこれです!

こんにゃくゼリー

……最終的にマシュマロに落ち着きました。

次に、どのように誓いのキスをしていただくかを検討。例えば、マネキンの口にマシュマロを取り付ける案もありましたが、新郎はHMDをつけているためそれがマネキンの頭とぶつかってしまうのでは問題です。新婦によって身長に差があることもあり、女性スタッフがトングで持って個別対応という形に決まりました。

誓いのキス

トングにも装飾を施して新郎から見えない部分にもこだわりました!

誓いのキスについては事前に新郎には伝えずサプライズという形を取ったところ、概ね好評をいただきまして恐悦至極に存じます。しかし、残念ながら新郎によってはタイミングが掴めず5人ほどキスをいただけない自体となってしまい、心から申し訳なく自責の念にかられております。この辺りを滞りなく運営することについては、企画、実装から当日のオペレーションまでを含めて今後の課題となりました。

新婦が緊張してる!

新婦が緊張してる!

VR結婚式では、室内に設置した2つのセンサによって新郎が空間内のどこにいるのかを把握して映像を表示しています(HTC Viveを使用)。イベント当日の朝に結婚式場でセッティングを行ってテストしたところ、映像が急にブレるといった現象に悩まされてしまいました。目の前にいたはずの新婦が突然ワープしてしまうような現象が置きてしまい、

「新婦が緊張してる!」

と大慌てしたわけですが、このままではイベントが開催できません。これはセンサの誤検出が原因だとすぐにわかりました。会場は壁から水が流れていたり照明が特殊だったりしたため、試行錯誤した結果、床のスポットライトを消してやるとほぼ問題がなくなりました。

ちなみに、屋外での使用や、VR系イベントでのセンサの誤干渉で正常な体験ができなくなる、というのはよくあることだそうです。

「二次元に行ってくる!」環境を作ることが重要?

新婦が緊張してる!

このようにして生まれたVR結婚式の当日を迎えて特に驚いたのは、中には感極まって泣き出してしまう人がいたことでした。

つくり手としては、そこまで気に入っていただけたということで、これ以上にないうれしい出来事でしたが、よくよく考えてみれば、『新妻LOVELY×CATION』の作中では彼女と過ごす2年間が描かれており、そうした2人の生活を最後まで歩んだ人にとっては、新婦への愛着は並々ならぬものになっているわけです。そうした中で実際の結婚式場を用いて執り行う式はもはや現実そのものとして受け入れられるほどインパクトがあったのではないかと思います。

新妻LOVELY×CATION Marriage Ring

新妻LOVELY×CATION Marriage Ring

中には公式グッズである天然石の指輪をつける人や、初回特典の婚姻届を持参してお義父さん(原画の唯々月たすく氏)から受領印をもらう人もいて思い思いに楽しんでいました。

VR結婚式

イベントのレポートを見ると、式場に新郎がぽつんと1人いるだけという非常にシュールな絵となっていましたが、VRの中で新郎は人生の節目を大真面目に体験していたのです。VRだから実際に体験してみないとわからない、という部分以上に、体験された新郎はそもそも式に臨む気持ちからして違っていたという点を知っていただきたいと思います。

VR結婚式

開発スタッフも朝のリハーサル時に実際に式場内でVR結婚式を体験しましたが、社内で何度も体験していたにも関わらず、入場でドアが開いてチャペルが広がった瞬間は頭が真っ白になり、HMDを被るとすっかり見慣れたはずの新婦が目の前に現れた時はいつも以上に輝いて見え、心地よい緊張感に包まれることで「あ、俺、結婚するんだ……」となりました。

「二次元がこちらにやってきた!」という状況を違和感なく体験するのは今現在の技術ではまだまだ難しいですが、VRを体験するにあたって本物の結婚式場で行うなど最適な環境づくりをしてやることにより、こちらから「二次元に行ってくる!」ような状況を作ってやると高い没入感を得られるのではないかという一つの結論を得ました。このようなすばらしいイベントを企画して機会をくださったhibiki worksさん、VR結婚式という企画にご理解いただき場所をお貸しいただいた会場の方、当日のオペレーションをいただいた運営スタッフの方々に深くお礼を申し上げたいと思います。

VR結婚式

2016年はVR元年と言われて様々なタイトルやイベントが発表され、VRの文化が花開くといった感じで盛り上がりましたが、まだまだ日進月歩でこれからも技術革新が継続され、飛躍的に向上していく期待感にあふれていると思います。

E-mote VRを用いたVR結婚式はドイツ、フランス、ウクライナなどのメディアからも取材を受け、そこから英語圏や中華圏などへ広がり海外でも高い注目を集めました。取材の中では、「バーチャルは現実の代わりなのか?」という鋭い質問も受けるシーンもありました。これについては、もちろん「2次元の世界に行ってしまうのもアリ」だと前置きした上で、空を飛んだり超人的な能力を獲得するなど、現実世界では難しくバーチャルな世界でしか得ることのできない体験を行うことで、そこから感じたものを現実世界に活かしてより豊かに生活できるようになることを目指している、といった感じで答えました。

VR、AR、MRの世界がそういった存在になれるよう、M2では引き続きより一層の技術開発に努めて参ります。

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